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知夫村で生まれ育ち、本土の自動車会社に長らく勤めたのち、定年退職後に知夫へ帰って来た大前さん。現在は「ぐるーり知夫里島」で働いています。  ​

知夫村で生まれ育ち、本土の自動車会社に長らく勤めたのち、定年退職後に知夫へ帰って来た大前さん。現在は「ぐるーり知夫里島」で働いています。

主にタクシー事業を行う、ぐるーり知夫里島。観光で知夫村へ訪れてきた方などの案内をしています。離島には公共交通機関が少なく、観光客にとってはなくてはならない存在です。また知夫村には高齢者も多く、車が必要な村民の生活サポートも行っています。

大前さんは会社員時代は海外で様々な経験をしてきたとのこと。だからこそ生まれ育った島に帰ってきた今、地元で仕事を楽しんでいると言います。今回はそんな大前さんに、知夫里島を楽しむコツをお伺いします。

離島・知夫で生まれ、

都会や海外で育った

離島と海外で学んだ、技術と経験

 

就職先を自動車メーカーに選んだのはなぜですか?

大前:中学卒業のタイミングで島を出て、隣の隠岐の島町にある隠岐水産高校に進み、船の機械について学びました。当時は自動車業界が急速に成長していて、小さな島の高校にまで求人が来ていたんです。それで自動車会社に就職することを決めました。

自動車メーカーではどのようなことをされていたんですか?

大前:車やオートバイの製造部門などで仕事をしていました。船と車のエンジンは大きさが違うものの、構造的にはそれほど違いはないんです。高校の時に船について学んでいたので、車の製造の仕事をする際にも役に立ちました。「それなら機械ならなんでも修理できるだろう」と期待されて、車とはあまり関係のない修理もやったりしましたけどね。

お仕事の中でいろいろ任されて大変だったようにも思いますが、大きな組織にいて気がついたことはありましたか?

大前:組織で一つのことを成し遂げるためには、色々なやり方があると気付かされました。最初は製造ラインで働いていたのですが、経験を積んだ後は海外で現地の人に教える、指導員をしていました。海外の取引先の人たちとも一緒になって仕事をしていたんですけど、日本とは考え方が全然違ったり、世界にはいろんな考え方の人がいて、十人十色ということを強く感じましたね。

「楽しいところに人が集まる」は世界共通

海外勤務も豊富だったようですが、どのような国に行かれたんですか?

大前:会社には、かなり色々な国に行かせてもらいましたね。アメリカやメキシコ、エジプト、イスラエル、東南アジアとか。アメリカのディズニーランドはいい思い出ですね。フロリダのディズニーランドが当時は、世界一売り上げを伸ばしている場所だったので視察に行きました。

視察でディズニーランドに行かれたんですね。そこで何か感じたことはありましたか?

大前:売り上げが伸びているのは、やはり魅力があるからだと思うんです。実際に行ってみると、やっぱり楽しいんです。小さい子だけでなく大人も楽しんでいるし、おじいちゃんやおばあちゃんだって楽しんでいる。年齢は関係ないんですよ。だから誰が行っても楽しい場所には、人が集まるということを感じました。やはり楽しいのが仕事でも製造でも必要ですよね。

 

逆に危険な目に会ったことはありますか?

大前:そうですね。もちろん楽しいばかりではなく、海外では危ないこともありました。ある国では銃撃事件に遭遇して大変な目にあったので、警戒心はずっと持っておかないとと思います。自分の身は自分で守るしかないですからね。

知夫村で生まれ育ち、本土の自動車会社に長らく勤めたのち、定年退職後に知夫へ帰って来た大前さん。現在は「ぐるーり知夫里島」で働いています。  ​

海外と日本が違うように、都会と知夫も違う

 

海外では危機管理が必要になってくるとのことですが、そういった日本と海外のような環境の違いは知夫にもありますか?

大前:そうですね、この島では都会にあるようなトラブルが少ないと思います。日常生活とか、近所の人との接し方も都会とは違うと思います。人口600人の顔の見える知夫村では、人との関わりが普段の楽しみになったり、生活する上で必要な信頼に繋がっていくと感じますね。

なので、「少しくらいプライベートの中に入ってきても大丈夫」というある程度寛容な人の方がこの島では楽しめると思います。移住者との距離感に慣れていない人もいるとは思うんですけど、心を開けばかなりざっくばらんに話してくれて、優しくしてくれると思いますよ。

知夫村で生まれ育ち、本土の自動車会社に長らく勤めたのち、定年退職後に知夫へ帰って来た大前さん。現在は「ぐるーり知夫里島」で働いています。  ​

仕事も生活も、

楽しくないと続けられない

仕事仲間とも、遊びの感覚を意識している

ぐるーり知夫里島のタクシーを利用するのは、どのような方が多いですか?

大前:もちろん観光の方もいるのですが、ぐるーり知夫里島は普通のタクシーと少し違うんです。乗り合いやデマンドタクシーのような感じで、高齢者の病院の送り迎えや買い物をサポートすることも多いです。だから使われる方はだいたい決まっていて、もう顔なじみみたいな感じですね。

そんなぐるーり知夫里島で働かれる上で、大切にされていることはありますか?

大前:例えば、村のお客さんを1日通してサポートすることもあります。まず最初に一緒にお金を下ろしにいって、買い物して、散髪に連れていくこともあります。そうした時は、迎えから家に送り届けるまでが仕事ですね。大変でも「自分で仕事を楽しくする」という意識を持つことで、仕事も遊び感覚でできるのが一番長続きしますよね。「楽しむ」ということは、いつも心がけて働いています。

知夫村で生まれ育ち、本土の自動車会社に長らく勤めたのち、定年退職後に知夫へ帰って来た大前さん。現在は「ぐるーり知夫里島」で働いています。  ​

四季それぞれ、住むからこそ知夫の魅力は増す

仕事も楽しんですることを意識しているとのことでしたが、日々の生活の中ではどのようなことが楽しみですか?

大前:やっぱり「食べる」というのが、一番楽しみですよね。今度何を料理しようとか、何を食べようとか、考えているだけでも楽しいんです。だから仕事の仲間とも朝飯や昼飯は一緒に食べますね。みんなでがやがや騒いで飲むとか、そういう時間もなるべく作るようにしています。

知夫ならではの食の魅力はありますか?

大前:大きなスーパーのない島なので、食べ物で季節を感じられるのは、知夫ならではの魅力だと思います。都会だとお金を払えばなんでも手に入るけど、知夫では食べるために、自分で獲らないといけないですからね。笑 魚を釣ったり、山に入ったりして苦労してするからこそ、味わえる満足感も一つの楽しみだと思います。旬に美味しいものを食べられた時には、大げさに言うと喜びに繋がりますよね。「やっとこの時期が来たか」と。自然相手なので、年によって獲れる時期が若干ズレたりとか、季節によって獲るターゲットを変えたりする楽しみも知夫ならではかもしれないです。

自然を食すイメージですね。ちなみにこの時期(4月)の旬の味は何ですか?

大前:イカですかね。イカ、うまいんですよね。ここのイカは格別だと思います。白イカやアオリイカなど、時期によって獲れるものが変わるんですが、本土に住んでいた時には、連休や夏休みに帰って来ても、タイミングが合わずなかなか食べられなくて悔しい思いをしました…。だからやっぱり、知夫の季節の食を楽しむためには、住んだりしないとダメだと思います。

知夫村で生まれ育ち、本土の自動車会社に長らく勤めたのち、定年退職後に知夫へ帰って来た大前さん。現在は「ぐるーり知夫里島」で働いています。  ​

今もこれからも、自然を楽しみ、喜ばれることを

パンフレットには載っていない知夫の良さを、人が伝える

そのままの自然が魅力な知夫だと思うのですが、短期間での観光客の方にはどのような楽しみがありますか?

大前:季節や天候に左右される自然相手の観光が多いので、全てのお客さんに楽しんでもらうのは難しいんですよね。たまたま良い時期に来て、美味しいものを食べて、良い出会いがあったら、満足して帰ってもらうことができるとは思うんですけど。たまたま天気が悪くて、あまり美味しいものを食べれない時期に来たら、それが「知夫村」のイメージになってしまうので。

だから私は来た人に「ただ単に」楽しんでもらえればと思います。観光の方はやはり、パンフレットでは紹介されていないような、知夫に住む人にしかわからないことを喜んでくれるみたいです。だから一緒に働くメンバーとも、「どうやったら知夫の魅力が伝わるか」をよく話し合うんです。

知夫村で生まれ育ち、本土の自動車会社に長らく勤めたのち、定年退職後に知夫へ帰って来た大前さん。現在は「ぐるーり知夫里島」で働いています。  ​

今までにお客様に喜んでもらえて嬉しかったことはありますか?

大前:観光で隠岐の四島を巡りに来たご夫婦の方と車内で話をしていたら、文句ばっかり言うんです。「はるばる隠岐に来たけど、天気が悪くて遊覧船に乗れなかった」、「目的のあわびが食べれなかった」、「旅館で頼んでも出してくれなかった」と。話を聞いていると、知夫が最後の島で明日本土に帰るとのことだったので、少しでもいい思い出にできればと思ったんです。

だから「私、ちょっと用意してあげますわ。」って伝えて、急遽島の漁師にあわびを用意してもらい、ホテルにも私から事情を話して、お食事に出してもらったんです。そうしたら、かなり喜んでくれて、帰宅後も贈り物を送ってきてくださって、感謝していただきましたね。僕等も喜んでもらえて嬉しかったですよ。

 

みんなで協力して、観光と次世代を盛り上げていきたい

観光のお客様も増えると思うのですが、ぐるーり知夫里島の今後の展望はありますか?

大前:知夫里島には赤ハゲ山や赤壁など良い資源がありますし、島外からも見に来てくれるお客さんがもっと楽しんでもらえることを、まずは大事に考えたいと思っています。

その上で「将来的にこの知夫里島をどうしていきたいか」を考えて、実行していくことが重要で、10年、20年先の夢と、そのために今は何をやればいいか、みんなで共有して進めていきたいです。

 

知夫のことをみんなで一緒に楽しんで考えられることが大切ですね。今後どんな人と一緒に働きたいですか?

大前:次の世代のサポートをしながら、応援していきたいと思っています。最近では下の世代の人がかなり増えてきて、「どんどんいろんなことをやっているんだな」というのを見るのは、やっぱり嬉しいですよね。

村民がこれからも島で暮らしていくためには、こうして次の世代に受け継いでいくことも必要だと思うんです。こういう小さい島ですから、昔から伝わるものも捨てたらダメだろうし、都会から移住してくる皆さんにも伝えて行けたらいいなと考えています。

だからそう言った意味でも、ざっくばらんにたくさん話ができたら良いですよね。島を楽しみに来ていただければと思います。

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